この記事で分かること
キャッシュレス決済の導入を検討している店舗経営者にとって、決済手数料は最重要ポイントの一つです。この記事では、主要サービスの手数料比較から、導入コスト、実際の選び方まで、初心者にも分かりやすく徹底解説します。
結論から言うと:
- 手数料は2.5%〜3.25%が相場
- 月間決済額60万円未満なら月額無料サービスがお得
- 60万円以上なら低手数料+月額有料プランも検討価値あり
キャッシュレス決済手数料の基本知識
手数料とは何か?
キャッシュレス決済の手数料とは、お客様がキャッシュレス決済を利用した際、クレジットカードなどの決済手段提供元へ支払う手数料です。決済が行われる度に手数料が発生し、決済金額や店舗数・売上規模などに応じて金額が決定します。
手数料の仕組み:
- 決済額の数%を店舗が負担
- お客様への価格転嫁は契約上禁止
- 売上から自動的に差し引かれる
2025年の手数料相場
手数料の金額は、基本的に3%前後で設定されていますが、決済方法や事業者によって差があります。
決済方法別の相場:
- クレジットカード:2.5%〜3.25%
- QRコード決済:2.0%〜3.25%
- 電子マネー:3.0%〜4.0%
主要キャッシュレス決済サービス手数料比較表
以下は、2025年6月時点での主要サービスの手数料比較です:
手数料・費用比較表
サービス名 | クレカ手数料 | QR決済手数料 | 月額費用 | 初期費用 | 入金手数料 |
---|---|---|---|---|---|
Square | 2.50%〜3.25% | 3.25% | 無料 | 無料〜 | 無料 |
Airペイ | 2.48%〜3.24% | 2.95%〜3.24% | 無料 | 無料 | 無料 |
stera pack | 1.98%〜2.70% | 2.70%〜3.24% | 3,300円* | 無料 | 無料 |
STORES決済 | 1.98%〜3.24% | 3.24% | 無料 | 無料 | 無料 |
楽天ペイ | 3.24%〜3.74% | 3.24% | 無料 | 無料 | 楽天銀行無料 |
*stera packは初年度無料、年間3,000万円以上で永年無料
各サービスの特徴と手数料詳細
Square(スクエア)
決済手数料: 2.50%〜3.25%
Squareは決済サービスを中心に、POSレジや予約サービス、ネットショップなどが利用できる店舗向けのサービスです。
特徴:
- 個人事業主でも導入しやすい
- 最短15分で審査完了
- 4種類の決済端末から選択可能
- 最短翌営業日入金
おすすめ業種: 個人事業主、小規模店舗
Airペイ(エアペイ)
決済手数料: 2.48%〜3.24%
2024年12月には中小事業者を対象とした「決済手数料ディスカウントプログラム」を開始し、これまで3.24%だった決済手数料が2.48%から利用できるようになりました。
特徴:
- 無料のPOSレジ「Airレジ」と連携
- 74種類の決済に対応
- iPadが必要
- QR決済手数料が低め(2.95%)
おすすめ業種: 若年層顧客が多い店舗、外国人観光客対応
stera pack(ステラパック)
決済手数料: 1.98%〜2.70%
VISAとMastercardを2.70%の決済手数料で利用できますが、月額サービス利用料として3,300円がかかります。
特徴:
- 業界最安水準の手数料
- オールインワン端末内蔵
- レシートロール紙無料
- 3年契約
おすすめ業種: 月間決済額が多い店舗(60万円以上)
STORES決済(ストアーズ決済)
決済手数料: 1.98%〜3.24%
特徴:
- ネットショップとの連携強い
- 最短翌営業日入金
- 拡張性が高い
おすすめ業種: オンライン・オフライン両方展開する店舗
決済方法別手数料の詳細解説
クレジットカード決済
クレジットカード決済は最も普及している決済方法の一つです。手数料率は概ね3%程度ですが、業種や店舗規模によっては5%以上かかる場合もあります。
手数料に影響する要因:
- 店舗規模(大規模チェーン:2〜3%、小規模店舗:4〜7%)
- 業種(リスクの高い業種は高率)
- 年間決済額
メリット:
- 高額決済に適している
- 幅広い年齢層が利用
- 利用率82.9%(キャッシュレス決済中)
QRコード決済
QRコード決済は、店舗に設置されたQRコードや、スマートフォンで表示されたQRコードを読み取って決済を行う方法です。PayPay、楽天ペイ、d払いなどが代表的です。手数料率は2%〜3%程度で、決済手数料無料やキャッシュバックのキャンペーンが開催されることもあります。
主要QRコード決済の手数料:
- PayPay:3.24%(直接契約時)
- 楽天ペイ:3.24%
- d払い:2.6%〜
- au PAY:2.6%〜
メリット:
- 導入コストが低い
- 若年層に人気
- キャンペーンで無料期間あり
電子マネー決済
手数料相場: 3.0%〜4.0%
主要電子マネー:
- 交通系IC(Suica、PASMO等)
- 流通系IC(nanaco、WAON等)
- iD、QUICPay
特徴:
- 少額決済に向いている
- レジ処理が高速
- チャージ式で確実な売上
手数料以外にかかる費用
初期費用
キャッシュレス決済を導入する場合、初期費用として発生するのが決済端末の設置費用です。決済端末の設置費用は、サービスごとにさまざまです。近年では競合との差別化を図るために、無料で端末を設置できるサービスも増えています。
主要サービスの初期費用:
- Square:4,980円〜(端末代)
- Airペイ:0円(キャンペーン中)
- stera pack:0円
- STORES決済:0円
月額利用料
キャッシュレス決済サービスのなかには、月額利用料がかかるものもあります。有料のサービスの場合、数千円前後が相場です。ただし、近年では導入のしやすさを重視するために月額費用を無料としているサービスが多く、店舗側の負担は減少傾向にあります。
入金手数料
入金手数料は、キャッシュレス決済で支払われた売上金を、入金先の銀行口座に振り込んでもらう際に発生する手数料です。手数料は数百円程度であることが多いですが、入金を行うたびに発生するので、入金サイクルを短く設定している場合、トータルで見ると高い費用になります。
入金手数料比較:
- Square:無料
- Airペイ:無料
- stera pack:無料
- 楽天ペイ:楽天銀行のみ無料
手数料で損しない決済サービスの選び方
月間決済額別おすすめサービス
月間決済額30万円未満の店舗
おすすめ: Square、Airペイ
理由:
- 月額費用無料
- 初期費用が安い
- 手数料も十分競争力がある
月間決済額30〜60万円の店舗
おすすめ: Airペイ、STORES決済
理由:
- 手数料割引プログラム適用可能性
- 月額無料でリスクなし
月間決済額60万円以上の店舗
おすすめ: stera pack検討
Visa/Mastercardの月間決済額が66万円を超える場合、月額費用3,300円を支払っても、『stera pack(ステラパック)』のスモールビジネスプランの方が費用負担は安くなります。
業種別おすすめサービス
飲食店
おすすめ: Square、Airペイ
- テーブル決済対応
- 小額決済が多い
- オペレーション重視
小売店
おすすめ: stera pack、STORES決済
- 高額決済対応
- 在庫管理連携
- 分析機能重視
サービス業(美容院等)
おすすめ: Square、stera pack
- 予約システム連携
- 顧客管理機能
- 高単価決済対応
キャッシュレス決済導入のメリット・デメリット
メリット
業務効率化
キャッシュレス決済を導入することで、会計業務の効率化を図れます。計算やお釣りの受け渡しなどのやり取りが、キャッシュレス決済であれば手間がかかりません。
- レジ対応時間35%短縮
- 現金管理業務削減
- 自動売上集計
売上向上効果
キャッシュレス決済は、現金支払いに比べると顧客単価が高くなる可能性があります。現金決済は、手元に現金がないと商品を購入できませんが、キャッシュレス決済であれば現金不要のため、購買意欲が高まりやすい傾向にあります。
セキュリティ向上
キャッシュレス化することで、防犯にもつながります。店舗に多くの現金を置かずに営業できるため、仮に強盗が入った場合でも被害に遭う額を減らすことができます。
デメリット
手数料負担
キャッシュレス決済導入の最大のデメリットの一つは、決済手数料がかかることです。手数料は決済方法や契約内容によって異なりますが、一般的には3%程度かかります。
入金タイミング
- 現金と違い即座に入金されない
- 資金繰りへの影響を考慮必要
システム障害リスク
- ネットワーク障害時は利用不可
- 停電時の対応が必要
実際の導入手順と注意点
導入までの流れ
- サービス選定(1-2週間)
- 手数料比較
- 機能比較
- 審査条件確認
- 申込・審査(2週間-2ヶ月)
- 必要書類準備
- 各決済会社の審査
- 審査結果通知
- 端末設置・初期設定(1-3日)
- 端末配送
- 初期設定
- スタッフ教育
- 運用開始
- テスト決済
- 本格運用
- 売上管理
審査に必要な書類
法人の場合:
- 登記簿謄本
- 決算書
- 営業許可証
- 銀行口座通帳
個人事業主の場合:
- 本人確認書類
- 確定申告書
- 営業許可証
- 銀行口座通帳
導入時の注意点
契約期間
- stera pack:3年契約(途中解約は端末返却が必要)
- その他多くのサービス:契約期間なし
審査基準
- 業種によって審査が厳しい場合あり
- 個人事業主は法人より審査が長期化する傾向
スタッフ教育
- 操作方法の習得
- トラブル時の対応
- お客様への説明方法
補助金・助成金活用情報
利用可能な補助金
IT導入補助金
- 対象:中小企業・小規模事業者
- 補助率:1/2以内
- 上限:450万円
小規模事業者持続化補助金
- 対象:小規模事業者
- 補助率:2/3
- 上限:50万円
ものづくり補助金
- 対象:中小企業
- 補助率:1/2〜2/3
- 上限:1,000万円
申請のポイント
- 事業計画の明確化
- 導入目的の明文化
- 売上向上の具体的な見通し
- 費用対効果の算出
- 導入コストと期待効果
- 投資回収期間の算定
- 必要書類の準備
- 見積書
- 事業計画書
- 決算書類
よくある質問と回答
Q1: 手数料に消費税はかかりますか?
クレジットカード決済の手数料には消費税はかかりません。これは、クレジットカード決済の手数料が「非課税取引」に該当するためです。ただし、端末レンタル料や保守料には消費税がかかる場合があります。
Q2: 手数料の交渉は可能ですか?
結論として、交渉によって決済手数料を下げることは難しいです。ただし、年間決済額が大きい場合(3,000万円以上等)は個別交渉が可能な場合があります。
Q3: 複数のサービスを同時に使えますか?
使えます。ただし、端末やシステムが複数になることで、運用が複雑になる場合があります。オールインワン型の端末を選ぶことをおすすめします。
Q4: 個人事業主でも導入できますか?
はい、可能です。Squareやメルペイ、楽天ペイなどは個人事業主でも比較的導入しやすいサービスです。
Q5: 導入後に別のサービスに変更できますか?
可能ですが、以下の点に注意が必要です:
- 契約期間の縛りがある場合
- 端末の返却が必要な場合
- データ移行の手間
まとめ:手数料で失敗しないキャッシュレス決済の選び方
選定のポイント
- 月間決済額を基準に選ぶ
- 60万円未満:月額無料サービス
- 60万円以上:低手数料サービス検討
- トータルコストで判断する
- 手数料だけでなく月額費用も考慮
- 入金手数料・端末費用も含めて計算
- 業種・顧客層に合わせる
- 若年層多い→QR決済重視
- 高額商品→クレカ決済重視
- 外国人観光客→対応ブランド重視
- 将来の拡張性を考慮
- オンライン決済への対応
- 他システムとの連携
- データ分析機能
最終チェックリスト
導入前に以下を確認しましょう:
- [ ] 想定月間決済額の算出
- [ ] 対応したい決済方法の整理
- [ ] 初期費用・月額費用の予算確認
- [ ] 審査に必要な書類の準備
- [ ] スタッフ教育計画の策定
- [ ] 既存システムとの連携確認
2025年のトレンド
- 手数料の低価格化競争:各社が手数料引き下げを実施
- オールインワン化:1台で全決済対応が主流
- AI活用:売上分析・予測機能の向上
- セキュリティ強化:PINバイパス廃止等の規制強化
キャッシュレス決済の導入は、もはや「検討すべきもの」ではなく「必須のもの」となっています。キャッシュレス決済の利用者は年々増加しており、キャッシュレス決済が選択肢にない店舗は顧客を取りこぼしかねない状況です。
手数料の比較だけでなく、自店舗の特性に最適なサービスを選択することで、売上向上と業務効率化を両立できます。まずは月間想定決済額を把握し、この記事の比較表を参考に、最適なキャッシュレス決済サービスを選択してください。
参考文献・データ出典:
- 経済産業省「キャッシュレス決済実態調査アンケート集計結果」
- 公正取引委員会「クレジットカードの取引に関する実態調査報告書」
- NIRA総合研究開発機構「キャッシュレス決済実態調査2023」
- 各決済サービス公式サイト(2025年6月時点)